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  Jo Jones Special - Shoichi Yui


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ジョー・ジョーンズ・スペシャル論    油井正一
まだハイ・ファイという言葉が普及していなかった1953年以来、ジャズ評論家のジョン・ハモンドは、クラシックの専門会社ヴァンガードの委嘱をうけてジャズ・レコードの吹込み監修をはじめた。そして発売された一連のすばらしい中間派セッションはことごとく僕たちを満足させてくれた。

この方法はのちにデッカを刺激して「ジャズ・スタジオ」シリーズを、またコロムビアを刺激して「バック・クレイトン・ジャム・セッション」シリーズを制作させる動機にもなった。「この方法」というのは出演者にスタジオの中にいるということを意識させないのである。どういう方法を用いるかは秘密になっているのでわからないが、少なくとも「冷たい吹込み室」という感じを全く与えないで、のびのびとした気分にさせてしまうらしい。ヴァンガードは業界一の音質のいいレコーディングを誇っているが、この吹込み装置もまた大変なものらしい。
Jo Jones Special
さてそうしてヴァンガード・ジャズに惚れ込んでいた僕ではあったが、今回キングから発売された「ジョー・ジョーンズ・スペシャル」だけは、ジャケットの解説を依頼されるまで聴いていなかった。早速針を通してみてビックリした。これはジョン・ハモンドが監修した史上多くの傑作のなかでもひときわ輝く傑作だったからである。

「流石にハモンドの企画だ」と唸ってしまう一要素としてカウント・ベイシーの特別出演がある。ベイシーは個人的にヴァーヴの専属だったから、他社がベイシー楽団を吹き込むことは厳に禁止されている。そのいい例が今月マーキュリーから出た「ノー・カウント・サラ」で全メンバーが出演してもピアノだけはロニー・ブライトに替わっている。そういう時にベイシーの代演をするのはサー・チャールズ・トンプソンかナット・ピアースだ。たとえ1曲だけとはいえ、ノーマン・グランツがベイシーの出演を許したのはやはり、ハモンドの人柄や業績がものを言ったわけである。Shoe Shine Boy

しかも、この1曲「シュー・シャイン・ボーイ」はテークを2つとって、2つともこのLPに収められているが、いずれ劣らず中間派ジャズの最大傑作に数えられてもよいものなのだ。テイク1はA面1曲目に、テイク2は最終トラックに収録されている。テンポはテイク2の方がやや速く、演奏時間も少し短い。パースネルはエメット・ベリー(tp)、ベニー・グリーン(tb)、ラッキー・トンプソン(ts)、カウント・ベイシー(p)、フレディ・グリーン(g)、ウォルター・ペイジ(b)、ジョー・ジョーンズ(d)で、吹き込みは1955年8月11日。この日にはナット・ピアースがベイシーに代わって更に4曲、「ラバー・マン」「ジョージア・メイ」「リンカーン・ハイツ」「エンブレイサブル・ユー」を吹き込んでいる。ソロイストの中で特にすばらしいのがトロンボーンのベニー・グリーンである。

ジョー・ジョーンズはスウィング時代から今日までビッグ・バンドとコンボの両方にわたり大きな影響をもった名ドラマーであるが、ドラム・ソロはほとんど無かった。ハモンドは特に命じて「キャラバン」に彼のソロを大きくフィーチュアしている。この面はメンバーが大きくかわるが、ジョーンズの他に出るソロイストはクラリネットのルディ・パウエルとトロンボーンのローレンス・ブラウンである。

日本におけるヴァンガードの第一弾が「ジョー・ジョーンズ・スペシャル」のような傑作であるとすると今後の発売スケジュールにますます大きな興味を抱かずにはおかないものがある。  (1960)


「スイング・ジャーナル 1960年4月号」より転載(一部修正)させていただきました。

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