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私と五十嵐兄弟とは永年に亘って個人的お付き合いをさせてもらっているが、そもそも明要氏との出会いは、彼が日本橋高等学校の1年先輩で、よく校庭で楽器の練習をしていたのを、戦後のジャズ、ポピュラーにのめり込んでいた仲間たちとよく聴いていたとき以来である。
2年前に発売された「オール・オブ・ミー」の続編として、この「サテン・ドール」が発売されることになったのは非常に喜ばしいことである。
前回のCDを聴いて、五十嵐兄弟の代表的な作品ができたなと思ったのは、私ばかりではないと思う。五十嵐兄弟をサポートするのにこの上ない人材を得て、トシちゃん(明要)のアルトサックスは、伸び伸びと音楽の真髄を聴かせてくれている。
若い頃の彼のアルトは、よく本場アメリカの有名なプレーヤーに似ていると言われていたが、いまや全くそれを意識することなく、彼自身の音楽、スタイルを確立していて、ワン・アンド・オンリーとはまさにそのことを言うのだと思う。
いつでも、どこでも音楽が流れていたら、それが彼の音楽だとすぐに判断できうるプレーヤーは、世界でもそう滅多にいるものではない。
彼の音楽は、どんな曲でも一音発しただけで曲想を確実に表現し、メロディを吹かせたらまず右に出る者はいないだろうし、いったんアドリブに入れば、これがジャズだという極致を聴くものに与えてくれる。
とくに若い愛好家には永く聴き込んで、よく味わって欲しい。 (2001)