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対談: 北村英治(cl) 原田長政(b) 五十嵐明要(as) 1976年
北 村 今日はトシ坊何か面白い話出してよ。
原 田 トシさんも自身にけっこうおかしな話が沢山あるよね。自分じゃいいにくいだろうけど(笑)
五十嵐 そうかい。オレそんなにおかしいかな(笑) 例えばオレのどんなところがおかしい?
原 田 いや全然おかしくないけどね。
原 田 あとで考えるとおかしいんだ(爆笑)
北 村 トシ坊の家は夫婦しておかしいからね。奥さんの話で最近の傑作があるじゃない。
原 田 どんなの?
北 村 写真とっててね、「うまく写ってるかしら、なんだか心配だわ」といってね、「写ってるかどうか見てみましょう」ってフィルムを引っぱり出して陽にかざしてみて、「あっ、やっぱり写ってなかったわ」(爆笑)ねえ、トシ坊、そうだろう。
五十嵐 いや、オレその話知らないよ(笑)そうかあ、でもうちのならやりそうだ(笑)
原 田 女のそういう機械物に対する認識っていうの、何ていうおかしな話あるよね。某有名ピアニストの奥さんなんだけど、掃除機使っててね、「今日は何だか電気が弱いわ」っていってるんだって(笑)それでソケットのところ見て、少し抜けかかってるのをみてね「ああ、やっぱり弱いわけだ」(爆笑)でもね、うちもあるんですよ、申しわけないけど(笑)電球が複数でついている照明器具があるでしょう。その球が一つ切れたんで、はずしといたんですよ。で、その照明器具を使ったら「あなた、そこから電気がもれない?」っていうんだ(笑)水道と同じ感覚なんだね。
五十嵐 なるほどね。
北 村 もっとすごい話あるよ。有名な女性タレントがテレビのスタジオでさ、「カメラのコードをふまないで!」っていうんだよ。何でかと思ったら「ふむと顔がつぶれて写るから」だってさ(爆笑)
原 田 それもかなりすごい話だね(笑)
五十嵐 気持ちはわかるけどね(笑)そうだあ、この話みんな知ってたかな。オレのオヤジの話なんだけど、オヤジがオレの家へ遊びにきててね、みんなで居間で話し合ってて、そのうちオレの娘が「英語の勉強の時間だから向こうへ行きます」っていったら、オヤジが「ほう、お前、英語の勉強するのか、偉いなあ」っていってね。「おじいちゃんだって英語知ってるんだぞ、スタンド・アップっていうの知ってる、立てってことだろう」って娘にいってるんだ。「へぇーおじいちゃんたいしたものね」なんていいながら娘がとなりの部屋へ行ったらね、オヤジが心配そうな顔をしながらオレのそばに来て耳元でさ「明要、今でも変ってないだろうな」っていうんだよ。
北 村 そりゃあいい、今でも変ってないだろうっていうのはいい。
五十嵐 やっぱり長年生きてるとさ、世の中がこう一生懸命変りすぎちゃってるから、もしかしたら変ってるんじゃないかって気がしたんだろうね(笑)
北 村 しかしオレ達も今そんなこといって笑ってるけど、あと何十年もするとオレ達だって気をつけないとそのぐらいのこといいかねないよ。
原 田 そうかもしれないね。
五十嵐 ところでさ、英ちゃんとの付き合い何年になるんだろう。
北 村 フォリナス・クラブの時からだから。
五十嵐 そうだね、だからあれは、オレがアルト吹き出した時だから・・・。
北 村 25年ぐらい前じゃない。
原 田 ヘレン・ケラー・バンド華やかりし頃だ(笑)
五十嵐 そうそう今は譜面の読めない人なんてほとんどいないけど、あの頃はね、ヘレン・ケラー・バンドが沢山あったね。それと指揮盲ってやつね(笑)
原 田 「譜面を読むのはカンと度胸だ」っていってた人いたね(笑)
北 村 カンと度胸ね(笑)
五十嵐 思い出したんだけどさ、「今どこ、今どこ」っていう有名な話があるね。
原 田 なに、それ?
五十嵐 あるオーケストラでね、三番にトラ(エキストラ)がきたんだよ。で、ショーの伴奏っていうのはみんな踊り子が譜面持ってくるんで、つまり初見でやるわけだよね。そのショーの伴奏の途中で隣の人がどこをやってるのか分かんなくなっちゃったんだよ(笑)
原 田 そのトラじゃなくて?
五十嵐 そう、そのトラは譜面に強い人だったんだよ。分かんなくなっちゃったのはその隣のミュージシャンさ。でね、演奏途中で「今どこ、今どこ」ってそのトラに聞いたんだ(笑)そうしたら、「ハイ、立川のオフィシャス・クラブに出てます」ってこたえた(爆笑)
北 村 いやあ、おかしいね。・・・話はつきないけど、トシ坊のとっときの話が出たとこで今日はこれまでってことにしようか。またチャンスがあったらやろうよ。
五十嵐 そうね。
原 田 お疲れさまでした。
(1976年 Smoke Rings Vol.2 Trio Recordsから抜粋しました)