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――自分のバンドを結成されたのは?
<海老原>しばらく「CBナイン」で演ってたんですが、「CBナイン」の後半はヒドイ状態で、ドラムの清水潤がクスリに溺れちゃってね。嫌気がさして辞めたんです。そのあとに八城一夫と一緒になって「ミッドナイト・サンズ」を結成したんです。自分たちの曲を作ったりして、結構がんばったんですが、音楽的なくい違いが出てきて、行き詰まったんです。
――それは具体的にいうと?
<海老原>それはね、ジャズのアドリブというものに対して、素朴な疑問が出てきたんです。アドリブというのは、ジャズにとって大事な要素のひとつなんですが、アドリブを重視するあまり、メロディーを崩して演奏することが多いわけですよね。ストレートの美しいメロディーでもわざと崩す、なんでこんなことをするのかなという、実に素朴な疑問が生まれたわけなんです。
アドリブの良さというのは当然わかるんで、全部を否定するわけではないんですがね。ただ「スターダスト」などの美しいメロディーの曲は、そのまんまストレートに吹いた方が、その曲を表現できるんじゃないか、ということなんです。そこいら辺から意見が食い違って「ミッドナイト」は解散。
それから「シックス・レモンズ・オールスターズ」「LQアイツ」「ザ・ロブスターズ」とバンドを作ったり壊したりしていたんですが、「ロブスターズ」を最後に演奏活動を辞めたんです。「シックス・レモンズ」は時勢に合わせたステージ・バンドで、ジャズというものを大衆にアピールできた面もありました。また、吉沢元治がオーケストラに入っていた頃、フリー・ジャズというか、今、坂田明がやっているようなこともやったんですよ。レコードも一枚くらい作ったね。でもああいうことって、演ってるとむなしくなってきてね、若かったんだね(笑)。
僕は古いかもしれないけど、音楽というものは美しいなあと思う、その気持ちが大切だと思うんです。それになんといってもジャズに大事なのはハートですから、自分のフィーリングに従ってきれいに吹くようにしたものです。 (中略)
――海老原さんのあとを継いでいるミュージシャンというと?
<海老原>五十嵐明要ですね。彼は本当に素晴らしいものをもっています。他の人もそれなりにうまいけど・・・アルト・サックスの持つ、本来の美しい音色からいったら五十嵐明要が一番じゃないですか。 (1982)