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カウント・ベイシーCOUNT BASIE ORCHESTRA

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カウント・ベイシー楽団論


■ メインストリーム・ジャズにはビッグ・バンドは含まないと定義していました。しかしその根源となっているカウント・ベイシー楽団に触れずにおられなくなりましたので、ページの追加をお許しください。

■ 日本では、カウント・ベイシー・オーケストラが1936年にジョン・ハモンドにスカウトされて初録音した年から、ビッグバンド不況で解散した1945年までを「オールド・ベイシー」と呼び、1951年に再結成されたものを「ニュー・ベイシー」と呼ばれています。

■ そして、日本では「ニュー・ベイシー」こそ音楽性が高いと評価されているように見えます。ベイシーは「ニュー・ベイシー」に限ると、そのように信じている人々は「オールド・ベイシー」をまともに聴いたことが無いように思えます。当時の録音はSP盤であり貧相なサウンドでしか聴き取れません。ところが近年のデジタル処理技術の発達で、相当高品位で80年前の録音を再生できるようになっているのですが。

■ 更に困ったことに「オールド・ベイシーのメンバーは楽譜が読めなかった」というとんでもないデマをウィキペディアに書いている人がいることです。どうやら当時のバンドの仕様を理解できていないようです。迷惑な話です。

Count Basie with his Orchestra and his Rhythm Section 1937-1943


■ 新しいベイシー・バンドは、オールド・ベイシーの「オール・アメリカン・リズム・セクション」を土台に編成されました。フレディ・グリーン(g)を中心に、エディ・ジョーンズ(b)、ソニー・ペイン(d)で構成されたリズム・セクションは伝統的なカンザス・スイングの伝統を受け継ぎ、そこにニール・ヘフティ、フランク・フォスター、ベニー・カーターなどの新感覚の編曲を得て新時代を切り開くビッグバンドとなりました。

Count Basie: Chairman Of The Board 1958

まさにニュー・ベイシー楽団の取締役会の模様を示すアルバムです。十分におなじみの顔ぶれですね。曲目は「Moten Swing」 左から、フランク・ウェス、フランク・フォスター、サド・ジョーンズ、フレディ・グリーン、マーシャル・ロイヤル。中央はグレッチ・エルドラド。

Count Basie Swings, Joe Williams Sings 1955

カウント・ベイシーの原点はブルース。オールド・ベイシーではジミー・ラッシング、ニュー・ベイシーではこのジョー・ウィリアムズ。ゆったりと流れるベイシー・リズム・セクションは心地よい。曲目は、Everyday I Have The Blues. The ComeBack. Alright, Okay You Win。


Count Basie - Dave Lambert Annie Ross Jon Hendricks, Every Day I Have The Blues1961


■ 1955年以降、バンドのメンバーはほとんど変更されなかったので、ベイシー・ファンは全メンバーの名前を憶えてしまいました。バンドは演奏旅行で欧州各地を巡り、そして、ついに1963年に日本初公演を果たしました。日本のベイシーファンはレコードでお馴染みのミュージシャンの演奏とニュー・ベイシーの真髄に触れる喜びをかみしめました。同時に、フレディ・グリーンが大ホールにサウンドを轟かしていることに驚愕しました。

カウント・ベイシー楽団の初来日の模様はこちらのページをご覧ください。

Count Basie and his Orchestra 1962

1.EASIN' IT 2.YOU ARE TOO BEAUTIFUL 3.CORNER POCKET 4.STELLA BY STAR LIGHT 5.BACK TO THE APPLE 6.I NEED TO BE BEE'D WITH
Personel: Count Basie(p) Freddie Green(g) Eddie Jones(b) Sonny Payne(d) Al Aarons, Sonny Cohn, Thad Jones, Snooky Young(tp) Henry Cocker, Quentine Jackson, Benny Powell(tb) Marshal Royal(as) Frank Wess(as,ts) Eric Dixon, Frank Foster(ts) Charlie Fowlkes(bs) Amazon Japan Site


■ ベイシー・バンドはクインシー・ジョーンズなどの若手アレンジャーを起用して、ファン層を広げました。また数多くのヴォーカリストたちと共演し、彼ら彼女らを一層に輝かせました。ベイシー・バンドの音楽性のピークは1965年頃だったと思われます。

Count Basie and his Orchestra 1965


■ それ以降は時代の変化に流されて、騒々しい大ブローをしでかすようになりました。テナー・サックスのエディ・ロックジョー・デイヴィスなどが典型的な例でしょう。加えて、サミー・ネスティコを編曲者に迎えてからベイシー・バンドのカラーが一変してしまいました。その作編曲はベイシー・バンドが熟成してきたサウンドを打ち壊し、基本となるべき「ベイシー・リズムセクション」を崩壊させてしまいました。ベースにピックアップを装着することが普通となり、クリーブランド・イートン(b)を典型例としてその下品なサウンドでベイシー・バンドは劣化の一途をたどりました。商売上手なネスティコはバンドの譜面を安価で市販し始め、ビッグバンドの若者たちがこぞってそれをベイシー・サウンドだと信じ込んで演奏し始めました。もうこうなると止まりません。

■ 1984年、カウント・ベイシー没後、かつてベイシー・バンド生き残りのサイドメンがリーダーを引き継ぎました。サド・ジョーンズ(tp)、フランク・フォスター、フランク・ウェス(ts)、グロバー・ミッチェル、ビル・ヒューズ(tb)、デニス・マックレル(d)たちがリーダーとなり、2018年現在はスコッティ・バーンハート(tp)がリーダーを務めています。この「レジェンダリー・バンド」は、フレディ・グリーンが存命の頃はなんとか聴けましたが、彼の没後は聴くに耐えないものになってしまいました。2017年のこの下に掲載の演奏風景をご覧ください。

The Legendary Count Basie Orchestra 2017



■ かねて晩年のカウント・ベイシー楽団とその後継楽団のお粗末さに閉口している中、ここに登場したのがジャズの歴史を探究しているトランペット奏者のウィントン・マルサリスです。彼はオールド・ベイシーから脈々と生き続けるベイシー・トラディションを継承する「カウント・ベイシー・オーケストラ」の姿を追究し、2018年のライブ・コンサートで提示しました。真のベイシー・ファンの求めていたものはこれだということが、その視聴回数の多さと寄せられる賛同と称賛のコメントで証明されています。なお、ここでマルサリスのこだわったところがあります。ソリストは前に出ず、その場で起立して演奏するスタイルです。これぞオールド・ベイシーのスタイルなのです。これで落ち着いた雰囲気を醸しているのです。また、いかに大きなホールでも適切な「密な」間隔を維持して、むやみに広がって配置していないことです。

JLCO: The Best Of Count Basie 2018

1. Jumpin' at the Woodside 2. Goin' to Chicago Blues 3. Topsy 4. April in Paris 5. Tickle Toe 6. Blue and Sentimental 7. Everyday I Have the Blues 8. Swingin' the Blues 9. Shiny Stockings 10. Blee Blop Blues (2018/04/28)
Wynton Marsalis(tp) Ryan Kizor(tp) Kenny Rampton(tp) Marcus Printup(tp) Jonah Moss(tp) Elliot Mason(tb) Chris Crenshaw(tb,vo) Sam Chess(tb) Kaspari Sarikoski(tb) Sherman Irby(as) Ted Nash(as) Victor Goines(ts) Julian Lee(ts) Paul Nedzella(bs) James Chirillo(g) Dan Nimmer(p) Charlos Henriques(b) Marion Felder(d)


■ ウィントン・マルサリスは、その前年の2017年にベイシー・スタイルについて、ベニー・カーターの作品集で実験的な演奏を紹介しました。各セクションのプロミュージシャンの中にハイスクールの生徒を参加させてベイシーサウンドを再現したわけです。ギターの生徒にはチャーリー・クリスチャン風味のソロを紹介させるなど、次世代に本来のジャズの真髄を学ばせると同時に新しい試みで、カウント・ベイシー・オーケストラのファンにとって今後に明るい夢が開けました。ウィントン・マルサリスを復古主義者とかエリントン・マニアなどと蔑視する人も多いようですが、今後彼のジャズ界に果たす役割には期待が大きいものと思われます。

Jazz at Lincoln Center Orchestra 2017

1. Vine Street Rumble 2. Katy-Do 3. Miss Missouri 4. Jackson Country Jubiliee 5. Sweet Glow 6. The Wiggle Walk 7. Meetin' Time 8. Paseo Promenade 9. Blue Five Jive 10.Rompin' at the Reno (2017/05/21) (一部の曲を割愛しました)


■ では、オールド・ベイシーの真髄を引き継ぐ新しいベイシー楽団の楽しい演奏をご覧いただきながら本章を終わらせていただきます。


Jazz at Lincoln Center Orchestra "One O'Clock Jump"

後半のリフの部分でバグっている箇所がありますがご容赦を。


Jazz at Lincoln Center Orchestra "Jingle Bells"

新着:2018/12/24 編曲はおなじみのErnie Wilkins アーニー・ウィルキンス。 可愛くて大人気のテナーサックスはCamille Thurman カミル・サーマンです。よろしく。


近年「批判はすれど対案を出せない」と政治家などが言われています。ここではそのようなことの無いように心がけました。(笑) (2018/07/26)


JLCO: Swings with "Joe Williams" 2018

新着:2018/11/03 Milton Suggs(vo) ライブ録画を編集しました。
残念ながらジョー・ウィリアムズの歌を歌うだけの歌唱力はありませんね。クリス・クレンショウ(Chris Crenshaw)(tb)の方がダントツにすぐれているように思います。


JLCO: Good Morning Blues - Happy Holiday 2015

ベイシーはブルースが一番。ボーカルはCecile Mclorin Salvantです。ジミー・ラッシングの歌唱を思い出した方こそベイシー・ファンですね。



Count Basie and the Stars of BIRLAND 1955

超レアなアルバム。バードランドでおなじみのピーウィー・マーケットの司会で始まるライブ録音です。
1 Theme: Lullaby Of Birdland / Why Not? 2 Basie Talks 3 Lester Young; Jumpin' At The Woodside 4 Lester Young; I'm Confessin' 5 Lester Young; Every Tub 6 Joe Williams; Every Day I Have The Blues 7 Joe Williams; Shake, Rattle And Roll 8 Joe Williams; Dinner With Friends 9 Stan Getz; Little Pony 10 Stan Getz; Easy Living 11 Stan Getz; Blues 12 Stan Getz, Sonny Payne; Blee Blop Blues 13 Sarah Vaughan; 'S Wonderful 14 Sarah Vaughan; Easy To Remember 15 Sarah Vaughan; East Of The Sun 16 Sarah Vaughan; How Important Can It Be? 17 Sarah Vaughan; That Old Devil Moon 18 Sarah Vaughan; Idle Gossip 19 Sarah Vaughan; Make Yourself Comfortable 20 Sarah Vaughan; Perdido / End Theme: Lullaby Of Birdland The Topeka Encores: 21 With Joe Williams; Chris Crossed 22 With Joe Williams; The Comeback




《蛇足》カウント・ベイシー楽団のムーンライト・セレナーデ 1939

1954年作品の映画「グレン・ミラー物語」。ミラーの作品「ムーンライト・セレナーデ」がひどい編曲で演奏されているのを知りがっかりしたミラーが、自ら編曲するという感動的エピソードが挿入されていました。そのひどい演奏をしていたと推測されるのが、カウント・ベイシー楽団ではなかったかというお話ですが、信じられますか。

「グレンミラー物語」の動画はすべて削除されますので、音声抜きで掲載してみました。